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皮なめしシモン【ど素人イスラエル旅行記:4】

  • 執筆者の写真: Hiroki Okuyama
    Hiroki Okuyama
  • 2019年6月22日
  • 読了時間: 5分

シャローム!

脱・三日坊主、奥山です。


前回、テルアビブの郊外に位置するヤッファ地区、そこで有名な観光地『皮なめしシモンの家』を訪れました。果たして、皮なめしシモンとは誰なのか。ということを今回はマジメに話していこうと思います。


シモンは約2000年ほど前、このヤッファ地区で皮なめしの仕事をしておりました。


このことは、あの『新約聖書』に記されています。

そう、イスラエルは『聖書の舞台』なんです。


聖書との壁【回想】

むか〜しむかし、ぼくが東京に住み始めた頃、これも今から約2000年ほど前の話ですが、新聞の訪問販売が家にやって来まして。その巧みな話術に、まんまと乗せられて新聞を買わされてしまった、という苦い経験があります。


僕がしてやられたのは新聞ですが、当時の数少ない友人の間で、新聞とおなじくらい訪問販売の話を聞いたのが、聖書。「また聖書の押し売りが来たよ」「宗教こえー!」そんな声を聞くたびに、ぼくの心の中では、新聞の苦い思い出と重なり、聖書というものが近づき難いものになっておりました。


しかし、気づけば、

あれだけ壁を感じていた聖書の世界が、目の前に。


訪問販売を避けていたってのに、こっちから訪問しておりました。


インターホンはありません。

それどころか、シモンの家は固く閉ざされています。

今は一般の方が所有されているので、見学できないようです。



彼はいったいどんな人で、どんな生活をしていたのでしょうか。


「皮なめし」って?

冒頭でも少し触れましたが、シモンは「皮なめし職人」でした。


皮なめしの『なめし』は『鞣し』と書きます。『革(かわ)』を『柔らかく』する技術のことです。動物の『皮』を加工して、丈夫で長持ちする『革』に。



シモンは動物の「皮」から「革」をつくり、それを売って収入を得ていたはずです。彼の家を訪れたとき、正直ど素人には「皮なめし」なんて耳慣れない言葉でしたが、これは人類と切っても切れない関係にあるようです。


その起源は約200万年前の旧石器時代にまでさかのぼります。狩猟がメインだった人類は、寒さから身を守るために動物の皮に目をつけました。「皮」は人類の身につけた初めての衣類といわれています。動物の皮をそのままにしておくと腐ってしまうため、乾かしたり、叩いたり、揉んだり、加工する必要があります。


現代では「クロムなめし」と「タンニンなめし」が主流です。


クロムなめし

クロムなめしは1858年にドイツのフリードリッヒ・L・クナップが開発した技術です。

現在、世に出ている革の約8割はこのクロムなめし。塩基性硫酸クロム塩という化学薬品を用い、短時間で皮をなめすことができるので、経済性に優れています。


タンニンなめし

タンニンといえばワインとかお茶にも含まれていますね。あの渋味がタンニンです。

タンニンのタンは英語の「tan(皮をなめす)」からきていて、「タンの素」を意味します。その歴史は古く、B.C.3000年頃にたまたま見つかったとされています。森には「天然のタンニンなめし」が存在します。落ち葉や木から、水辺にタンニンが染み出すためです。ここで動物が亡くなると、その皮は偶然なめされて革になります。この自然の神秘を昔の人は見逃さなかったわけです。


日本における「皮なめし」

ちなみに日本に皮なめしがやってきたのは約1000年前のこと。瀬戸内海の塩を用いて、当時から播磨地方の姫路(兵庫県)で盛んに行われております。現在の主流になっている上記の方法は明治時代になってからやってきました。また、アイヌ民族は獣皮のほかにも鮭の皮をなめしたり、独自の皮なめし文化を持っています。


塩と水

塩を用いると言いましたが、下処理として皮を腐らせないために、ひとまず塩漬けにします。そして皮なめしの加工場まで運んで、皮に付いた塩を洗い流します。つまり皮なめしあるところに「塩」と「水」あり、というわけです。

イスラエルで「塩」と言えば、とても重要な場所がありますが、これはまたの機会に。「水」はイスラエルではとても貴重です。だからヤッファ地区のように皮なめしが職業として成り立つ場所は珍しいのではないかと思います。



シモンは2000年前の人なのでクロムなめしではなく、タンニンなめしをしていたのかなと、ド素人なりに調べたうえで考えました。しかし人類初の技術である「油なめし」の可能性もあります。ヤッファ地区は地中海の側にあるので「油なめし」の素材になる魚が獲れたはずだからです。ここら辺の、聖書からはみ出た想像も、この旅の楽しみ方だったりします。


ユダヤにおける「皮なめし」

ユダヤ人の社会には「カシュルート」と呼ばれる厳しいルールがあります。イスラム教では豚が食べられず、ヒンドゥー教では牛が食べられないと学校で習った覚えがありますが、ユダヤ人の信仰するユダヤ教にもそういうタブーがあります。


・四つ足の獣で蹄(ひづめ)が分かれて、反芻(はんすう)するものは食べてOK。

・魚介類でヒレと鱗のあるものは食べてOK。

・鳥で死肉を食べるものはNG。

・昆虫はイナゴやバッタなど、ごく一部のみOK。


こんな感じで生き物を食べるうえで様々なルールがあります。

ユダヤ人は生き物との関わり方について厳しく考えているようです。


そんな中で生き物の皮を扱う「皮なめし職人」は卑しい仕事とされていました。



卑しいとされていた「皮なめし」を生業とするシモン。

なぜ彼は聖書に登場するのでしょうか。


次回は、さらなる新キャラを紹介しながら、その謎を追っていきます。


マジメ全開、旅そっちのけの記事を最後まで読んでくれたみなさん、ありがとう!


トダラバ!


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